金融庁は2025年10月19日、銀行が暗号資産(仮想通貨)を投資目的で取得・保有できるようにする制度改正を検討し始めました。これまで原則禁止とされてきた暗号資産投資について、銀行が株式や国債と同様に売買できる仕組みを整える方針です。
また、暗号資産市場ではビットコインやイーサリアムといった主要銘柄に加え、比較的小規模で価格変動の大きい草コインの取引も拡大しています。実際に、ミームコインの代表格であるドージコイン(DOGE)は、2025年9月に現物ETFとして初めて上場。これをきっかけに、草コイン おすすめにあるようなトークンにも投資資金が流入するなど、市場の裾野が拡大。DeFi機能を持つ銘柄や、マイニングとゲーム要素を融合させた銘柄など、現実世界に価値をもたらす草コインが改めて注目を集めています。
こうした動きを受け、金融庁は銀行グループが「暗号資産交換業者」として登録し、取引サービスを提供できるようにする案も検討対象としています。制度改正の方向性については、2025年内にも金融審議会の作業部会で具体的な議論が行われる予定です。
暗号資産を取り巻く状況と見直しの背景
銀行による暗号資産の保有は、2020年に改定された金融庁の監督指針により事実上禁止されててきました。これは、価格変動の大きい暗号資産を大量に保有すれば、銀行の自己資本や財務の健全性に影響を及ぼす恐れがあることが理由です。
しかし、ここ数年で世界的な金融の潮流は変化。 たとえば米国では、JPモルガンやBNYメロンなどが暗号資産のカストディサービスを開始し、さらにシティバンクも2026年に同様のサービスを開始する計画であることを発表しています。このようにして、金融機関が一定条件のもとで暗号資産を扱うことが認められ、銀行の参入が進んでいる現状です。
こうした国際的な流れを受け、日本の金融庁も制度改正を検討する段階に入りました。背景には、国内の暗号資産市場が拡大を続けていることもあります。日本暗号資産取引業協会(JVCEA)のデータによると、2025年10月時点で国内の暗号資産現物取引高は2兆70億4,900万円に達したと報告されています。
銀行参入による市場の期待感
銀行による暗号資産投資が認められれば、その影響は金融市場全体に広がるとみられます。
銀行は自社の投資ポートフォリオの中に暗号資産を組み込み、さらにグループ会社を通じて売買や交換サービスを展開できるようになります。 つまり、これまで一部の専門業者に限られていた取引が、より安定した金融基盤のもとで行われることになるのです。
加えて、信用力の高い銀行が市場に加わることで、一般投資家にとっても安心感が増します。
日本では過去に取引所のハッキングや経営破綻が複数発生。2024年5月にも暗号資産交換会社「DMMビットコイン」から約482億円相当のビットコインが流出した事件が起きており、暗号資産に対して慎重な姿勢を取る人は少なくありません。銀行の参入は、そうした不安を和らげ、個人が暗号資産にアクセスしやすい環境を整えるきっかけになるでしょう。
一方で、銀行側にも明確なメリットがあります。金利収入だけに頼らない新たな収益源を確保できる点です。取引・保管・資産管理を一体的に行う「デジタル・バンキング」の仕組みを整えれば、従来の金融サービスとは異なるビジネスモデルが生まれる可能性があります。
銀行が持つ信頼性とデジタル技術を融合させることで、暗号資産を含む次世代の金融エコシステムが形成されていくかもしれません。
税制改正との関係
また、金融庁の今回の動きは、政府が進める暗号資産税制の見直しとも密接に関係しています。財務省と金融庁は2025年度税制改正大綱で、法人が保有する暗号資産について、期末時価評価益への課税を撤廃する方向で検討中です。
これまで企業は、保有する暗号資産が期末時点で値上がりしている場合、実際に売却していなくても課税対象となっていました。このため、国内企業がトークンを長期保有したり、Web3関連ビジネスを展開したりする際の負担が大きいことが問題視されていたのです。
しかし、税制の改正が実現すれば、国内企業がより柔軟にトークンを発行・保有可能に。銀行にとっても暗号資産関連ビジネスを進めやすい環境が整います。
さらに、個人投資家向けには、暗号資産取引の分離課税化の導入も議論されています。現在は総合課税のため、所得が高い投資家ほど税率が55%に達することもあります。一方で、分離課税化となれば、税率は20%前後になります。
リスク管理と監督体制の強化
銀行が投資目的で暗号資産を持てるようになるとしても、価格変動のリスクが消えるわけではありません。
相場が大きく動けば、銀行の財務や自己資本に影響が出るおそれもあります。こうした事情を踏まえ、金融庁は各行に対して慎重な姿勢を求めています。
暗号資産を保有する場合は、リスクをどのように測定し、どこまで許容するかといった内部体制を明確にする必要があります。
また、銀行グループが暗号資産交換業に参入する際には、マネーロンダリング対策やテロ資金供与の防止など、国際基準に沿った管理体制が欠かせません。顧客の資産を自社の資金と分けて扱うこと、そしてその運用を外部にも分かる形で透明化することが求められます。
こうした取り組みを積み重ねることで、暗号資産が金融システム全体に及ぼす影響を抑えながら、市場の健全性を保つことが狙いとされています。
Web3政策と連動する金融制度改革
加えて、金融制度の改革は政府が進めるWeb3関連政策にもつながっています。
自民党のWeb3プロジェクトチームでは、NFTやDAO、トークンエコノミーといった新しい仕組みを国内で育てる方針を掲げています。暗号資産を単なる投機の対象ではなく、新しい金融インフラの一部として活用していこうという流れです。
そして、銀行による暗号資産投資の解禁は、その流れを支える重要な一歩になり得ます。銀行がデジタル資産を取り扱えるようになれば、企業がブロックチェーンを使って資金を集めたり、独自のトークンを発行したりするケースが増えるでしょう。結果として、日本の金融業界がデジタル経済の時代に対応するスピードは一段と速まるはずです。
長く「リスクの高い資産」とみなされてきた暗号資産を、金融システムの中でどのように位置づけていくのか。金融庁の今回の判断は、日本の金融行政にとって大きな節目になるかもしれません。