クレジットカードの巨大ネットワークであるVisaが、決済の“裏側”でステーブルコイン(法定通貨連動型の暗号資産)によるセトルメント(最終清算)対応を一段と拡大しました。
特に上場告知が出るタイミングでは、USDTやUSDCなど基軸ステーブルコインへの乗り換え需要が一時的に高まり、チェーン間ブリッジやガス料金に短期的な揺れが生まれることがあります。
Visaの清算レイヤーにステーブルコインが広く使われるようになると、こうした“イベント由来の混雑”があっても国境間の資金移動を安定させやすい設計に近づくはずです。
カードで払う体験はそのままに、決済の土台がより速く・安く・グローバルに動く可能性が高まりました。
Visaの“裏側”が速くなる一方で、“表側”の市場では新規上場が資金の流れを左右します。
そこでバイナンス 上場予定の情報をチェックしておくと、短期的なステーブルコイン需要の増減を見通しやすくなるのでチェックをしておきましょう
今回の記事では、発表内容の要点と仕組み、日本で想定される変化、留意点を初心者向けにやさしく整理します。
対応コイン・チェーン・通貨が一挙に拡大
Visaは自社のセトルメント基盤で、米ドル連動の「USDG」と「PYUSD」を新たに扱い、ユーロ連動の「EURC」にも対応し、ブロックチェーンは従来のEthereum・Solanaに加えてStellar・Avalancheを追加しました。
つまり対応ステーブルコインが広がり、使えるチェーンが増え、通貨はUSDだけでなくEURでも清算できるようになるということです。
すでに米国では支払い用ステーブルコインの包括法(GENIUS法)が2025年7月に成立しており、制度の整備が進む中で大手決済企業の動きも加速しています。
「裏側の変化」がなぜ大きいのか
カード決済は、利用者がカードで支払った後、加盟店が売上を受け取るまでに、国境や通貨をまたぐ資金移動・両替・銀行間清算がいくつも連なります。
この最後の受け渡し(セトルメント)の部分でステーブルコインを使えると、従来の複雑なルートよりも速く・低コストで資金を動かせる場面が増えるのです。
Visaは23年にUSDCのパイロットを始め、暗号資産取引所向けカードなどでの実運用を積み上げてきました。
今回の拡大は、その延長線上で「通貨・チェーンの選択肢」を増やし、ユーロ圏なども巻き込む布石と捉えられます。
清算窓口が24時間動けば、銀行のカットオフや休日の影響が薄れ、返金や売上入金のタイミングが平準化しやすいです。
越境ECやサブスクの継続課金でも資金繰りの読みやすさが増し、事業者の運転資金コストを抑える効果が期待できます。
日本のユーザーや事業者に変化は?
日本の消費者がカードで支払う操作はほとんど変わりません。
しかし、海外ECや越境サブスク、クリエイターの海外売上など、国境をまたぐお金の動きでは「着金の速さ」「為替・転送のコスト」「休日をまたぐ処理」の面でメリットが出やすくなります。
これらは表に出にくい“見えない改善”ですが、積み重なると「返金が早い」「売上の入金が安定する」といった体験差につながりやすい領域です。
Visaの経営陣も、安定通貨と送金領域を今後の成長ドライバーと位置づけています。
対応チェーンとコインをやさしく把握
Ethereumは実績と堅牢性が強みで、Solanaは高スループットと低手数料が特長です。
Stellarはもともと国際送金のユースケースに強く、Avalancheは高速確定とサブネットの柔軟性で注目されてきました。
ネットワークごとの性格が違うからこそ、Visaの「複数チェーン対応」は実務上の選択肢を広げる意味があります。
ステーブルコインも、Paxosが関与するUSDG・PYUSD、CircleのEURCなど、発行体や準備資産の体制に違いがあり、規制整備の進展とあわせて採用が広がりやすい土壌が整ってきました。
規制・KYC・為替の現実を見落とさない
利便性が上がる一方で、規制や本人確認はむしろ強化される流れです。
たとえば香港では25年8月に施行された新法で、ステーブルコイン発行体に厳格な本人確認(KYC)を求めるなど、匿名性を抑えるルールが明確化されました。
利用が広がるほど、マネロン対策や国際協調の要請は強まります。
ネットワーク手数料は下がっても、為替スプレッドや加盟店手数料など別のコスト要因は残るため、「万能の値下げ装置」ではありません。
“その場”での暗号資産決済
もう1つの大きな潮流が、メッセンジャー内で完結する暗号資産決済です。
Telegramは米国ユーザー約87,000,000人へのTONウォレット提供を開始し、アプリ内での送金・少額決済の間口を一気に広げました。
SNS・メッセンジャーの「チャットの流れを切らない支払い」は、投げ銭やミニアプリ内の課金など、カードとは違う導線で暗号資産を日常化させる可能性があります。
今日からできる準備
個人も事業者も、まずは「ステーブルコイン=値動きが小さい暗号資産で、送金や清算に使われる」という基本像を掴むところから始めると理解が早いです。
事業者は、既存の決済代行やカードネットワークが裏側でステーブルコインを使い始めても、フロントの実装を大きく変えずに恩恵を受けられる可能性も。
加えて、会計・税務・KYC/AMLの整備状況をウォッチしつつ、パイロット環境で実フローを検証しておくと、波が来た時に迷わず選べます。
変わりゆく支払いの未来
今回のVisaの拡張は、消費者が暗号資産ウォレットを持たなくても、決済の基盤が静かに置き換わっていく段階に入ったことを示します。
“見えない改革”が積み上がるほど、国境をまたぐお金の動きはさらに滑らかになり、生活やビジネスのどこかで「早い」「安い」「止まりにくい」を実感する場面が増えていくはずです。
表の体験が変わらなくても、裏側の進化は確実に起きています。
その変化は気づかぬうちに標準となり、誰もが恩恵を受け、送金や返金の待ち時間も短縮されていくことでしょう。