引用: Pixabay
ワイオミング事件とは、アメリカのワイオミング州で発生したとされる電波ジャック事件の名称です。
ニュース番組の放送中に突然画面にノイズ(砂嵐)が発生し、その後6分間にわたって謎の文字列と不気味な映像が流されました。映し出されたメッセージは全て抽象的で意味深で、画像もモノクロの男性の頭部ばかりを映したものでした。映像を見た人々は「気味が悪い」と不快感を示したといいます。
しかし、ワイオミング事件は電波ジャック事件として広く知られているにも関わらず、事件に関する情報(発生日時や電波ジャックを受けたテレビ局など)が何も公開されていないのです。
多くの人々の関心を得たワイオミング事件の情報が何もないというのは、一体どういうことなのでしょうか。
本記事では、ワイオミング事件と映像の内容、そして謎に包まれた事件の真相について解説いたします。
電波ジャックとは?
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電波ジャックとは、電話やラジオ、テレビやインターネットなどの電気通信の電波を乗っ取り、放送中のラジオやテレビ番組を妨害したり、別の音や映像を送信する行為のことを言います。
日本でも度々電波ジャック事件が発生しており、NHKニュースの放送中に突然ある事件の真相解明を訴える演説が放送されたり、大河ドラマ「独眼竜正宗」の放送中に「東京都議会議員の補欠選挙に立候補している長谷川英憲には投票するな」という演説が放送されたりしました。
NHKには80~100件の苦情が寄せられたといいますが、不慮のできごとであったにも関わらずそれだけの苦情を寄せられてしまったテレビ局はたまったものではありません。
電波ジャックは、前述したような政治的な内容を主張するために行われることが多いとされています。しかし、ワイオミング事件で流された映像からは政治的な意図は読み取ることはできず、何か心理的な意図が隠されているように見受けられます。
ワイオミング事件の概要
【1】突然乗っ取られたニュース番組
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事件当日、アメリカのワイオミング州に位置する小さな町では、いつも通りローカルニュース番組が放送されていました。町の人々は家族でテレビを囲み、穏やかな時間をすごしていたにちがいありません。
しかし、そんな家族の団らんを突如打ち破るかのようなできごとが起こります。地元で起きたことや天気の情報を伝えていたはずのニュース番組が突然途切れ、画面が砂嵐で埋め尽くされてしまったのです。
砂嵐が消えたかと思うと、不安感をあおるような不気味な音楽とともに、「333-333-333」という電話番号のような数字と、「We Present A Special PRESENTATION(これから特別なプレゼンテーションをお送りします」というメッセージが映し出されました。
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その後約6分間にわたって、不可解なメッセージと色々な角度から撮影された男性の頭部が交互に映し出されました。
画面に映し出された男性の頭部の映像はいずれもモノクロ映像で、こちらに向かってニタリと笑みを浮かべているものや、スキンヘッドの人物の横顔を映したものなどがありました。
目が白や黒のペンキのようなもので塗りつぶされている画像が多く、それがますます気味の悪さを増長させています。
【3】病院へ駆け込む人も
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映像が終わると再びニュース番組が映し出され、これまで不気味な映像が流れたことに気がついていないキャスターが平然とニュース原稿を読み上げる様子が放送されました。
しかし、視聴者はすっかりパニックになってしまいます。映像の気味の悪さに頭痛や吐き気を訴える人、中には病院へ駆け込んだ人までいたといいます。
テレビ局にも苦情が殺到し大騒ぎになりましたが、結局電波ジャックをした人物が誰なのかも、どのような意図で電波ジャックをしたのかもわからずじまいでした。
ワイオミング事件の実際の動画を紹介!
【1】実際の動画の内容とは
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ここからは、ワイオミング事件で放送されたという実際の動画の内容をご紹介いたします。
この動画の不気味な所は、映し出されるメッセージや画像を見ても制作者の意図が全くつかめない所です。
動画の中で表示されるメッセージは抽象的なものが多く、視聴者の深層心理に何かを訴えかけようとしているような印象を受けますが、視聴者胸の内を見透かしたり、不安を煽るような文言はますます不気味さを助長しています。
不気味な機械音とともに流れるモノクロ映像と不可解なメッセージを6分間も見せられれば、気分が悪くなってしまう人がいてもおかしくありません。
【2】消えたニュース映像と謎のメッセージ
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いつも通り流れていたはずのニュース映像が途切れ、画面が白っぽい砂嵐で埋め尽くされました。
そして砂嵐が消えたかと思うと、画面には「333-333-333」という数字とともに、「これから特別なプレゼンテーションをお送りします」という英語で書かれたメッセージが映し出されます。
「これからとても素晴らしいものをお見せしましょう」というメッセージの次に映し出されたのは、男性の顔の左半分のモノクロ画像です。
突然映し出された男性の顔に驚いていると、今度は男性の頭部を正面から撮影した画像に切り替わります。
これ以降、男性の頭部の画像とメッセージが交互に延々と映し出されていくのです。
【2】「あなたは病気です」というメッセージ
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連続して映し出される男性の頭部の映像に気味の悪さを感じていると、それを見透かしたかのように「なぜ嫌がるのですか?」というメッセージが映し出され、視聴者はドキリとします。
またもや男性の顔、そしてその周囲には同じ男性の顔を縮小させた画像が次々と映し出され、視聴者の不安感を煽るかのようです。
次に映し出されたのは、「あなたは病気です」、「私たちはただあなたを治したいのです」というメッセージ。
その後、「あなたの心の中に秘められているものは何ですか?」、「私たちにはすでにそれがわかっています」という意味深なメッセージが映し出され、ますます視聴者の注目を集めようとしているかのようです。
【3】不安を煽るメッセージ
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それ以降も不可解なメッセージと男性の頭部の画像が続きます。「あなたは全てを失うかもしれません」という不安を煽るようなメッセージの後に、画面の左右に男性の頭部が映し出され、右側のものだけがゆっくりとフェードアウトします。
今度は「何も貴重なものなどありません」、「永遠に隠れることはできません」というメッセージの後に、男性の顔の映像が映し出されます。男性の口が動いたかと思うと、男性の頭部がズームアウトし、再び男性の顔のアップが映し出されます。
「私たちはそのドアの前に立っています」というメッセージが流れ、視聴者たちは思わず部屋のドアを振り返ってしまったことでしょう。「あなたは道に迷っているのです」というメッセージの次は、またもや男性の顔が映し出されます。
【4】意味深なメッセージ
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「真実は虚構の中にあります」という意味深なメッセージの後、ゆっくりと左に回転する男性の頭部の画像に続き、ゆっくりとズームアウトする男性の顔の画像が映し出されます。
そして「全ての良いものが」というメッセージを最後に、映像は砂嵐に消え、何事もなかったかのように再びニュース映像が流れ始めるのです。
視聴者の深層心理に迫るようなメッセージや不安を煽るようなメッセージから、この映像には何か重大な事実が隠されているのではないかという考えすら浮かんできます。
しかし、何か伝えたい事実があるのなら、もっと具体的な言葉でメッセージのみを映し出せばいいはずです。にもかかわらず、制作者は抽象的なメッセージと男性の頭部の画像を放送し、見た人々を混乱させました。
制作者の意図は、一体何なのでしょうか。
ワイオミング事件の真相は?誰かのイタズラ?
【1】日本の反応
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動画はたちまち拡散され、日本でも「絶対に夜一人で見てはいけない不気味な動画」としてニコニコ動画などでアップロードされました。
ネット上では「画像も不気味だけど、BGMの電子音も怖い」、「動画を見てこんなにゾッとしたのは久しぶり」といったような声がある一方、「なんかハマっちゃって5回ぐらい見てる」、「作った人センスあるよね」とその独特の雰囲気に好感を抱く人も少なからずいるようです。
【2】少なすぎる情報
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そのように日本でも話題となったワイオミング事件ですが、ネット上に拡散された動画以外の情報が何ひとつ残っていないのです。
つまり、資料として残っているのは動画そのものだけで、ワイオミング事件が起こった日時も、どのテレビ局の電波が乗っ取られてしまったのかもわからないということです。
アメリカ国内だけでなく日本でも話題になった事件であるにも関わらず、何も情報が残っていないというのは明らかに不自然ではないでしょうか。
【3】誰かがイタズラでネットに流した?
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ネット上では、たちまち「ワイオミング事件はイタズラで作られたでっち上げ事件なんじゃないか?」という説が広まっていきました。
そして、「電波ジャックされたにしては映像の切り替わりがスムーズすぎる」、「何の情報もないのはやっぱりおかしい」と、ワイオミング事件は架空の事件であるという説が有力となったのです。
さらには、ワイオミング事件の動画が話題になったのは2004年に動画がインターネット上にアップロードされて以降で、それまで1度も新聞などのメディアに取り上げられたこともなかったことから、ワイオミング事件が架空の事件であることはほぼ確実となりました。
ワイオミング事件の真実!
【1】名乗り出た制作者
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そんな中、2007年12月、ワイオミング事件で問題になった動画の制作グループが名乗りをあげました。
彼らはアメリカの「Something Awful Forms」というユーモアサイトを制作するクリエイターで、有志を集めてクリエイティブ動画の制作を始めたといいます。
その一作目が、問題となったワイオミング事件の動画だったというわけです。
【2】なぜ動画を制作したのか
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彼らは動画を制作した理由を、「マックス・ヘッドルーム事件の影響を受けたからだ」と明かしました。
マックス・ヘッドルーム事件とは、1987年11月22日にアメリカのイリノイ州で発生した電波ジャック事件です。ニュース番組の放送中、続いてテレビドラマの放送中に突然画面が真っ暗になり、サングラスをかけた男性の姿とモノクロの背景が映し出されました。
その男性が、当時イギリスの音楽番組の司会をしていたCGキャラクター、マックス・ヘッドルームに酷似していることから事件にはその名前が付けられたようです。
この事件については、制作者の意図や、制作者が誰であるのかも解明されていません。
【3】マックス・ヘッドルーム事件の動画
マックスヘッドルーム事件 pic.twitter.com/2TaUQoO3ID
— (同) (@Daiouika10meter) June 19, 2019
マックス・ヘッドルーム事件で放送された動画は、ワイオミング事件の動画と負けず劣らず不気味で、支離滅裂なものでした。
画面の中でニヤニヤと笑みを浮かべるマックス・ヘッドルームは、踊るように身体を揺らし、笑いながら意味不明な単語をまくしたてます。その後はコーラの缶を投げ捨てて画面に向かって中指を立てたり、テレビアニメのテーマソングを口ずさんだり、手袋を着けたかと思うと「この手袋、血のりが付いたみたいに汚いんだよ!」と手袋を投げ捨てたりしました。
脈絡のない行動の連続に戸惑っていると、画面が途切れ、次はお尻を晒したマックス・ヘッドルームの姿が映し出されます。そしてメイド服を着た女がマックス・ヘッドルームのお尻をハエ叩きで叩き、マックス・ヘッドルームが悶絶し始めたところで映像は終了です。
ワイオミング事件の動画は見ていて胸がざわざわするような不気味なものでしたが、マックス・ヘッドルーム事件の動画はとにかく支離滅裂で、どこかコミカルな印象すら受けてしまいます。
【4】ワイオミング事件は架空の事件だった
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動画の制作者が名乗り出たことにより、動画はクリエイター達がマックス・ヘッドルーム事件に触発されてイタズラで制作したもので、実際にはワイオミング事件という電波ジャック事件は起こっていないということが明らかになりました。
真相が明らかになったとはいえ、動画を見て不気味に思ったり気分が悪くなってしまった人々は、「なんて趣味の悪いイタズラなんだ!」と文句のひとつでも言ってやりたくなったのではないでしょうか。
ワイオミング事件(電波ジャック)まとめ!
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ニュース番組が突然途切れたかと思うと、男性の頭部と不可解なメッセージ、そして不気味なBGMが6分間にわたって放送され、「不気味すぎる」と話題になったワイオミング事件。
アメリカ国内だけでなく日本でも拡散され話題になった動画が、実はクリエイター達によるイタズラ動画だったとは驚きです。
ちなみに、ワイオミング事件の動画がインター上で話題となったため、味を占めたクリエイター達はちゃっかり続編を制作、公開したのだとか。
ワイオミング事件は、クリエイティブな作品の影響力の大きさや、影響力が大きいゆえにときには物議を醸すこともあるということの良い例であると言えるのではないでしょうか。