桜田義孝五輪担当大臣が辞任したのは、記憶に新しい2019年4月10日のこと。
「失言大臣」として有名になった桜田義孝氏ですが、そもそもどのような人物なのでしょうか?
生まれは千葉県柏市。地元で大工をしながら夜間は明治大学商学部に通い、25歳という若さで建設会社を立ち上げ、政治家にまで上り詰めたという叩き上げです。
そんな苦労人エピソードを持つ桜田義孝氏の政治家としての経歴は、柏市議、千葉県議を経て1996年に国会議員デビューし、現在まで7回当選。2018年には五輪担当大臣に就任というなかなか立派なもの。
地元千葉県では大物議員として有名だった桜田義孝氏ですが、五輪担当大臣としては活動実績よりも度重なる失言、迷言がフィーチャーされ、ついには失言辞任まで果たしてしまいました。
就任から辞任までの間は、わずか半年。
それでも「遅すぎた」「やっとか」という声が多く上がったのは、その失言内容が五輪担当大臣、ひいては閣僚としての適性を欠くものだったからにほかなりません。
桜田義孝の発言をご紹介!
引用: Pixabay
それでは、国会とお茶の間を大揺れさせた失言、迷言がたっぷり詰まった、桜田語録をめくってみましょう。
桜田義孝の不謹慎発言まとめ【失言編】
ここでは粒ぞろいの失言の中でも、大炎上必至の問題発言をピックアップしています。
言葉足らずの申し子のような桜田義孝氏。もう少し違った言葉で表現できたなら、大臣生命を存続することができたかもしれませんね…。
「復興以上に大事」
引用: Pixabay
桜田義孝氏が五輪担当大臣を辞任する決定打となったのが、2019年4月10日に行われた自民党・高橋比奈子議員のパーティーでの失言です。
高橋議員の出身地である岩手県も東日本大震災の被災地に含まれると述べた上で、桜田義孝氏は「復興以上に大事なのは高橋さんでございますので、よろしくどうぞお願いします」と列席者の前でスピーチ。
「被災地の復興を軽視した、五輪担当大臣としてあるまじき失言だ」と、与野党から集中砲火を浴びました。
さすがに今回は取り返しのつかない失言をしてしまったと自覚があったのでしょう、その後桜田義孝氏は官邸を訪れ、五輪担当大臣を辞任する意思を表明。失言からわずか2時間という早さで受理され、事実上の更迭となりました。
「被災者の気持ちを傷つけるような発言をして申し訳ない」と謝罪し、辞任することで責任を取ろうとした桜田義孝氏。
しかし蓮舫議員はTwitter上で、「予算の桁を間違えるのは仕方ないとしていました。自治体の読み方も、読み違えるのは納得は出来ませんが。これは、ない。復興以上に政治家が大事だという発想そのものに呆れるしかない」と批判。
さらに達増拓也知事は、「大臣の個人的な問題よりも、政権全体として、復興の考え方が定まっていないのが問題」とコメントしており、五輪担当大臣を辞任して済む話ではないと物議を醸しました。
失言を受け、被災地である福島県民からも非難が殺到。桜田義孝氏は2018年11月に福島市の果樹園を訪問し、「県産の果物を食べてもらうことで、福島の復興を世界に発信したい」と五輪担当大臣としての誓いを立てたばかりでした。
復興五輪の理念に水を差す担当相の発言に、県民からは「福島の場合は、特に復興が最重要課題。安易にあの言い方をすることが信じられない」、「気分はよくありませんよね。本当ショックですよね」、「福島が復興してほしいと思っているので、違和感があります」などの声が聞かれた。
FNN PRIMEより引用
汚染土「人の住めない福島に」
引用: Pixabay
遡ること6年、当時桜田義孝氏が文部科学副大臣として在職中だった頃にも福島原発がらみの失言をしています。
2013年10月5日、東京電力福島第一原発事故で発生した放射性物質を含むごみ焼却灰などの指定廃棄物の処理について、「原発事故で人の住めなくなった福島に置けばいい」と失言。
この日桜田義孝氏は自民党千葉県連会長として、同県の選出国会議員や市長らと懇親会に出席していました。
件の失言について桜田義孝氏は、指定廃棄物の保管場所に悩む自治体に向け、「(福島第一原発を含む)東電の敷地内で管理するという考えもあるのでは」と質問する意向のもと述べたもので、「福島県全体を指すのではない」「私個人の主張ではない」と釈明しています。
翌々日の記者会見にて、桜田義孝氏は菅義偉官房長官から「誤解を与える発言は慎むように」と注意されており、その後失言を撤回、謝罪。
実際、国の取り決めで指定廃棄物は発生した都道府県で処理することとなっていますが、桜田義孝氏のこの失言は、「いつかは故郷に帰りたいと願う被災者の気持ちを踏みにじるものだ」と、国民からも非難の的となりました。
「故郷を一瞬にして失った」じゃないんだよな 故郷は今も昔もあるんだよ 一時的に住めなくなったとなぜ言えないのか 避難が長引く中で戻れなくなった人もいる、となぜ言えないのか
いつまでも福島を悲劇の地に押し込めるようなことをなぜ言ってしまうのか
なんかめっちゃ悲しくて泣きそう
— すずりん🐾もふもふ (@bell_2_ring) 2018年6月6日
池江選手に対し、「ガッカリ」
2019年2月12日、競泳の池江璃花子選手が白血病を公表した件について、桜田義孝氏が失言したと大ニュースになりました。
その内容は、記者団からコメントを求られた桜田義孝氏が、「金メダル候補として期待している選手なので、がっかりしている。盛り上がりが若干、下火にならないか心配している」と述べたというもの。
難病を抱える池江選手への配慮が足りない失言だとして、桜田義孝氏は大バッシングされました。
立憲民主党の辻本国会対策委員長は、「五輪担当大臣としてはもちろんだが、人間として、そういう発想はちょっと信じられない」と批判。
国民民主党の原口国会対策委員長にいたっては、「心ない発言で、即刻、罷免、更迭に値する」と、桜田義孝氏の辞任を迫る発言まで飛び出す始末。
ネット上でも、「これが自分の娘だとして、こんな残酷な言葉をかける父親がこの世にいるだろうか。大臣以前に人間失格」などと、桜田義孝氏の失言に対して数多くの批判が散見されました。
翌日、桜田義孝氏は謝罪と共に失言を撤回。
事態は収束するに思えましたが、失言とされるコメントの全文を読むと、「治療に専念して元気な姿を見せてほしい」と池江選手の体調を気遣う文言もあり、「炎上の発端はメディアが悪意のある切り取り方をしたからだ」と非難の矛先がマスコミへと一転、賛否両論の意見が飛び交う大騒動へと発展します。
昨日の報道での全発言の映像 さらに印象変わります 字面にすると引っかかる「がっかり」も、文脈からすると自分が意気消沈している意味のみで、相手を謗るニュアンスはまったく聞き取れません
(年配者は意気消沈の意味で主語の自分を省略してがっかりしているを使います) pic.twitter.com/z1FdhsP1WP
— Sugiyama Jun (@genki2010) 2019年2月14日
しかし桜田義孝氏も五輪担当大臣という立場である前に、発言に影響力がある公人でもあるので、揚げ足を取られないよう言葉のチョイスには慎重になってほしいものですね。
桜田義孝の不謹慎発言まとめ【言い間違い編】
政治家というのは単なる言い間違いまで言葉尻を捉えられてしまうのか、さすがに責めすぎでは…と思ってしまいましたが、それは過去の失言があまりにも波紋を広げたからでしょう。
現在御年70歳。認知症を疑う声もチラホラ…。
「東京パラピック」
引用: Pixabay
2018年10月2日、桜田義孝氏は自身の五輪担当大臣就任会見において、「東京パランピック、、、パラピック、、、パラピック競技大会、東京パラリンピック競技大会担当大臣の桜田義孝でございます」と噛み噛みの自己紹介を披露。
言い間違いを訂正しようと必死だったのでしょうか、「オリンピック」という単語はどこかへ消えてしまったようです。
緊張からの失言だったのでしょうが、スタートダッシュで大ゴケしてしまった桜田義孝氏に、オリンピックの行く末が心配だと思ってしまった人も多いのではないでしょうか。
「レンポウさん」
引用: Pixabay
2018年11月5日に行われた衆議院予算委員会で、桜田義孝氏は立憲民主党の蓮舫議員の名前を「レンポウ」と言い間違える失言をしました。
これに対し、蓮舫議員から「レンホウです」と訂正され、周りから失笑されてしまう場面も。桜田義孝氏はこの失言について謝罪をするも、その後も幾度となく名前を間違える有り様でした。
言い間違いは誰しもあるものでしょうが、指摘されてもなお間違えてしまうのは失礼極まりありません。
「1500円」
引用: Pixabay
同会での失言はこれだけにとどまりません。
蓮舫議員との質疑においてオリンピックにかかる国の予算を聞かれた際には、「1500円でございます。あ、ごめんなさい、1500億円でございます」と答えてしまう桜田義孝氏。
びっくりの価格破壊を起こした言い間違いでしたが、必死に汗を拭うその様子からして、蓮舫議員の威圧に完全に根負けしてしまっている印象です。
しかし問題なのは単なる言い間違いではなく、正しくは1700億円だったということ。
「1500円」に私は全く反応していません。誰でも言い間違えはあるからです問題は正しい答弁は「1700億円」だということです。会計検査院に指摘された国の関連予算は8011億円。そのうちオリパラ事務局が大臣指示で精査した国の関連予算は1700億円と計算したものです。その精査のあり方の問題指摘でした。
— 蓮舫・立憲民主党 (@renho_sha) 2018年11月6日
桜田義孝氏はちぐはぐ答弁になった理由を、蓮舫議員から事前通告がなかったためだと主張しましたが、実際には事前通告があった模様。
五輪担当大臣を担うにはあまりにも勉強不足だと問題視されました。
「いしまきし」
桜田義孝氏は、2019年3月24日に宮城県石巻市で行われた復興五輪イベントを欠席しており、その理由を追及された際、「いしまきし」と3度も誤るという失言をしています。
五輪担当大臣としての自覚があるのか疑わしい言動に、会場が騒然となったのは言うまでもありません。桜田義孝氏が五輪担当大臣を辞任する前日、2019年4月9日の衆議院内閣委員会でのことでした。
東日本大震災による同市の死者・行方不明者は計3972人で、被災自治体で最多。質問した自由党の木戸口英司氏(岩手選挙区)は委員会後「政府は都合のいい時に『復興五輪』と言うだけで中身がスカスカなのが分かった」と皮肉った。
河北新報より引用
桜田義孝の不謹慎発言まとめ【迷言編】
引用: Pixabay
なぜこれだけ責められても強気でいられるのか、と頭を抱えてしまう迷言揃い。
それもそのはず、桜田義孝氏は自身のことを「楽観主義者」であると公言していたことが発覚しました。なんとなく人の良さは伝わってきます、しかし政治家は賢く立ち回る術も必要なのです…。
「自身でPC使ったことない」
五輪担当大臣のほかサイバーセキュリティ戦略本部担当大臣も兼任し、サイバーセキュリティ基本法改正案の担当閣僚でもあった桜田義孝氏。
にもかかわらず、インターネット関連の知識が皆無であることが数々の迷言によって発覚してしまいます。
迷言が飛び交った舞台は、2018年11月14日に開かれた衆議院内閣委員会。
「自分でパソコンを使っているのか」と聞かれたことに対し、桜田義孝氏は「25歳で会社を立ち上げてから、業務は秘書や従業員に指示してやってきた。自分でパソコンを打つことはありません」という迷言で答弁しました。
質問した無所属の今井雅人議員は、「パソコンをいじったことがない方が対策するのは信じられない」と呆れ顔。
また、パソコンが扱えないだけでなくUSBが何なのか知らなかったようで、国民民主党の斉木武志議員と噛み合わない対話を繰り広げる一幕も。
斉木氏 日本の原発にUSBジャックはあるか
桜田氏 基本的には使われない
斉木氏 あるかないかを聞いている
桜田氏 使わせない
斉木氏 USBジャックをご存じか
桜田氏 たとえあったとしても万全の対応をする
日刊スポーツより引用
「使う場合は穴に入れるらしいが、細かいことは私にはよくわからないので、専門家に答えさせます」という驚きの迷言まで飛び出し、桜田義孝氏の担当大臣としての能力を不安視する声が続出しました。
「世界に私の名が知れた」
「パソコンは使わない」「USBを知らない」といった桜田義孝氏の迷言は海を飛び越え、世界中を震撼させました。
英ガーディアン紙が「もしハッカーが桜田大臣を標的にしても、何も情報を盗むことができない。彼は最強のセキュリティーかもしれない」と取り上げるなど、海外の主要メディアでも桜田義孝氏を茶化す報道が相次ぎました。
そんなさなか、2018年11月21日に行われた衆議院内閣委員会でのこと。
国内外で嘲笑の的になっているのにも関わらず、「世界で私の名前が知られたのかな、と。良いか悪いかは別として、有名になったんだな」と新たな迷言を生み、至って呑気な様子を見せる桜田義孝氏。
14日の同会に引き続き、「インターネット関連の基礎すら把握できていないのに、サイバー戦略担当として指示が出せるのか」と資質を疑問視する声が上がったのは言うまでもありません。
これに対し桜田義孝氏は、「優秀なスタッフを含め、自分一人だけでなくいろいろな能力を総結集してジャッジするのが大臣としての仕事」とした上で、「判断力は抜群だと思っています!」と強気な迷言で反論。
辞任する意思はないと主張しました。
「首相を目指すのはやめる」
引用: Pixabay
2018年12月20日、東京五輪・パラリンピック大会に向けて多言語サービスの促進を図るフォーラムにて、桜田義孝氏は「首相を目指すのはやめる」と心中を明かしました。
そもそも首相を目指していたという事実に驚愕してしまう迷言ですが、その理由は「英語とパソコンができないから」だと語った桜田義孝氏。
以前にも桜田義孝氏は「パソコン教室には何回か通ったが忙しくて覚えるのは諦めた」という迷言を残しており、諦めた理由が言葉通り忙しかったからなのか学習能力の範疇を超えていたからなのか真相は不明ですが、パソコンができないことには相当劣等感を抱いていたようです。
また、自前の英語力のみで各国首脳と会話する安倍晋三首相を見て、英語の必要性を実感したという桜田義孝氏は、自戒の念を込め「これから総理を目指す人は英語をしゃべらなくてはダメだ」と表明しました。
失言が多いだけに、まずは日本語の勉強を徹底してほしいと多くの国民が突っ込みを入れたことでしょう。
サヨナラ失言大臣!桜田義孝の今後はいかに?
相次ぐ失言、迷言にもかかわらず、なぜ桜田義孝氏の辞任はここまで伸びたのでしょうか?
それは政界の重鎮・自民党の二階俊博幹事長の要望で、桜田義孝氏の入閣が決まったからだと言われています。
そもそも桜田義孝氏は大工出身の叩き上げの政治家。切れ者というタイプではありませんが、苦労人であり人情味のある性格であるため、二階幹事長のお気に入り議員の一人でした。
故に安倍晋三首相もなかなか決断が下せず、辞任となった場合は任命責任まで問われてしまうので、失言が続いても「適材適所」という言葉で桜田義孝氏をかばってきたのです。
先日、後任として鈴木善幸首相の息子である自民党の鈴木俊一議員が就任しました。
小さな言い間違いまで槍玉に挙げられたりと少し可哀想になる面もありましたが、五輪担当大臣を退いた後も、桜田義孝氏には政治家という自身の立場を自覚し、言葉をよくよく吟味してから発言してもらいたいものです。
今後は猛省し、真摯な姿勢で国政に臨んでもらうことを、一国民として切に願っています。