切り裂きジャックの正体は?DNA鑑定されるもデマ説浮上?

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突然、1888年のロンドンに恐怖の夏が

引用: Pixabay

時はイギリスのヴィクトリア朝。産業革命による経済の発展が成熟に達したイギリス帝国の絶頂期でした。ところが霧の街ロンドンで奇怪な連続殺人事件が起き、市民を恐怖のどん底に陥れます。

5人の女性を猟奇的な方法で殺害した謎の殺人鬼はやがて「切り裂きジャック」(Jack the Ripper)として知られるようになりました。

 

切り裂きジャック事件とは?

 

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1888年の8月31日から11月9日の約2ヶ月間、イギリスのロンドンで『切り裂きジャック事件』と呼ばれる事件が起こったのです。

被害者は合計5人。いずれも女性で売春婦でした。被害にあった5名の女性の名前と年齢が以下になります。

  • メアリー・アン・ニコルズ(47歳)
  • アーニー・チャップマン(47歳)
  •  エリザベス・ストライド(44歳)
  • キャサリン・エドウッズ(43歳)
  • メアリー・ジェーン・ケリー(25歳)

こちらの5名の女性を殺害したため、連続殺人事件として切り裂きジャック事件は知られているのです。

女性たちの遺体は、全身をバラバラな状態に切断されており、あちこちにばらまかれていました。そのうえ内臓までもを取り出されていたのです。

検死結果によりますと、犯人は人体の解剖学に関して相当な知識を持っていたと思われます。たとえば、9月30日早朝に、ホワイトチャペルにおいてElizabeth Stride と Catherine Eddows が1時間以内のうちに相次いで殺害されました。

このうち Catherine Eddows の喉は切開され左の腎臓がとりだされていました。さらに不気味な字で「Jack the Ripper」と記されていました。犯人が自分をこう呼んだのです。

被害者の横には長いショールがありました。これが最終的な決め手になることは当時のだれにも想像できないことでした。

スコットランドヤード (ロンドン警視庁) の懸命の捜索にもかかわらず、犯人は捕捉されませんでした。その理由としましては、突如切り裂きジャックの犯行が終わってしまったからなのです。

通常ですと連続殺人事件の場合、殺しをしたいという衝動が繰り返され、警察に捕まってしまうことが多いのです。しかしながら切り裂きジャックは、突如犯行をやめて完全に行方をくらましてしまいました。

切り裂きジャックは完全犯罪を犯しており、証拠のない連続殺人事件であり、切り裂きジャックの正体となる完璧な証拠が見つからなかったのです。

 

地理的な犯行範囲

引用: Pixabay

切り裂きジャック」による5件の殺人現場はそれぞれたがいに1マイルと離れておらず、ロンドン東部のホワイトチャペルの中あるいはその近くで起きています。

当時、事件が起きたホワイトチャペルには62軒の売春宿があり、1200人の売春婦が働いていました。1888年4月3日から1891年2月13日にかけて合計11件の残虐な殺人事件が起きていますが、このうち5件が切り裂きジャックによるものされています。

被害者は5人の女性でした。1888年8月31日(最初の凶行)から11月9日(5回目の凶行)までのことでした。

 

犯人の推測

 

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『切り裂きジャック事件』の犯人の仮説として考えられたものがいくつかありました。

まず、一連の連続殺人事件によって犯人の性的嗜好がわかったのです。1人目から4人目の被害者が中年の女性であったため、犯人は中年の女性に性的興味があったことが伺えます。

また、犯人は夜中に警察官に怪しまれずに徘徊することができ、そして被害者の女性たちの元へ近づくことが出来ていたことから警察内部に犯人がいるのでは?とも疑われました。

しかし、事件後に警察の内部調査が行われた際に、犯人と思われるような方は見つかりませんでした。

5人目の被害者の女性が唯一若かったこと、また殺害の方法がもっとも残虐であったことから、連続殺人事件に見立てた違う人物の犯行ではないかという仮説も出ていました。

何人かの消息筋は「Jack the Ripper」は実は「Jill the Ripper」だったのではないかと考えます。

「Jill the Ripper」は  Mary Pearcey  を含む女性集団で、恋する男の妻と息子を切り裂きナイフで殺害した罪で 1890年に死刑に処されました。それでこの可能性は消えました。

なお、同時期に起きた別の殺人事件は「革のエプロン(Leather Apron)」という仮称の犯人によるものとされました。

捜査段階で絞り込んだ中にはポーランド系移民で23才のヘアードレッサーである Aaron Kosminski (統合失調症だったされる) が含まれていました。Catherine Eddows の遺体の横に残されていたショールはのちに MRI (核磁気共鳴装置) で検査した結果、もともとロシアのペテルスブルグで作られたものだったことがわかります。

Kosminski が持っていたとしても不思議ではありません。ポーランドはロシアやドイツに抑圧された歴史を持っています。

 

犯人がロンドン警視庁に送った手紙


 

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犯人は劇場型犯行を好んだのか、何通かの手紙をスコットランドヤード(ロンドン警視庁)に送っており、スコットランドヤードを嘲るとともに次の犯行予告も。

切り裂きジャックからとみられる手紙は、全部で3枚ありました。他にも何百枚と、切り裂きジャックからの手紙と名乗るものはあったのですが全て偽物だったのです。しかし、この3枚の手紙については、偽物であると断定ができず、本当に切り裂きジャックからの手紙であったとみられています。

まず1枚目の手紙について紹介します。1枚目は、1888年の9月27日にセントラル・ニューズ社へと配達された手紙です。9月25日の消印が押されておりました。この手紙には最初の書き出しに、『切り裂きジャック』という署名があったのです。

そして2枚目に手紙が届いたのは、1888年の10月1日にふたたびセントラル・ニューズ社へと配達されたものでした。この2枚目の手紙は消印が同日でした。こちらも1枚目と同様に、『切り裂きジャック』という署名が書かれていました。

最後3枚目の手紙です。こちらは、1888年の10月16日にホワイト・チャペル自警団代表のジョージ・ラスク宛てに配達されたものでした。消印は10月15日に押されていたものです。

こちらの手紙には『切り裂きジャック』という署名はありませんでした。しかし、代わりに『地獄より』という書き出しで始まっていたのです。

また、3枚目の手紙と一緒に送られてきた小包がありました。この小包の中にはなんと、アルコール保存された腎臓が入っていたのです。のちに検証され、この腎臓は人間の女性のものであるとの確認がされました。

「Jack the Ripper」というあだ名はこれらの手紙から来たという説がありますが、真偽のほどは定かではありません。

 

犯人の正体は?


引用: Pixabay

ロンドン警視庁によるものだけでなく、数え切れないほどの調査や推測がこの残虐な犯人に対してなされましたが、犯人の名前、性別および動機に関しては当時は何もわかりませんでした。

殺害後遺体をバラバラにしたことから、人体の解剖学にきわめて詳しい医学関係者であっただろうから、その線で医学教育を受けた人々がまず第一候補。あるいは大小の違いはあるものの刃物の使いかたが達者であろうから、食肉業者や散髪屋。これらをスクリーニングしました。

被害者全員が売春婦であったことからその縁もしらべたそうです。単にいきずりでだけでもよかったのか。どの線からも犯人は浮上しませんでした。

犯人女性説もありました。被害者が警戒なく近づけたから。しかし実際に遺体に残された芸術的とも言える切り裂き(ripping)は、当時解剖学を勉強することがまず不可能であった女性がなしたものとは考えられません。

かくして「切り裂きジャック」は歴史のかなたに消えたのです。

 

Kosminski のその後

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Kosminski は今でいう統合失調症(偏執的な精神分裂)を患っており、1891年に妹をナイフで襲ったため精神病院に収容されます。

1890年の中頃になって切り裂きジャックの凶行を目撃した人物があらわれますが、正式な証言を拒んだためロンドン警視庁は Kominski を逮捕することができませんでした。Kominski は1919年に壊疽で死亡しました。

 

科学的手法でショールを分析

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1888年の4番目の犠牲者の遺体の横に置かれていたショールはその後も洗濯されることなく代々受継がれ、ついにオークションで Russell Edwards という人の手にはいりました。

ここから解明のドラマが動きはじめます。数奇な運命をたどったショール

時を経た唯一の証拠に科学的分析が挑戦します。DNA鑑定を行った結果、まず血痕は Catherine Eddows のものであるのがわかりました。同じショールに付着していた精液は犯人のものと仮定します。

これから被害者 Catherine Eddows の子孫と 加害者 Aaron Kosminski (Jack the Ripper) の子孫のDNA鑑定(ミトコンドリアDNAの照合) がおこなわれました。結果は:  Aaron Kosminski = 切り裂きジャック だったということです。

実際、Kosminskiは殺人事件があった現場の近くに住んでおり、また売春婦たちを恨んでいたとの情報もあったため、容疑者であると疑われていました。

また、このDNA鑑定では犯人の外見の分析も行われ、その結果犯人は茶色の髪の毛に茶色の瞳をしているということもわかったのです。

ただしこの結論に異論をとなえる学者もいます。

ミトコンドリアDNAは母から子に伝えられるもので、細胞核DNAのような決め手にはならない。同じようなミトコンドリアDNAを持つ人は多くいるという趣旨です。また他の学者が内容をチェックする手順を踏んだ科学論文誌には発表されていません。

ともあれDNA鑑定は捜査にあたって既に使われています。血痕だけでなく唾液や汗からDNAが採取できます。2008年に東京都江東区で起こったひったくり未遂事件では、被害者の手提げカバンに付着した微量の犯人の汗が犯人特定の決め手になりました。

なお、頭髪はDNAが発現したものでDNA鑑定の対象外です。

 

斬り裂き魔ジャック・ザ・リッパー!

 

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本当に Kosminski が切り裂きジャックであったかどうかは、更に今後の解明を待つしかありません。

ただ言えることは、犯罪で証拠を残さないことはほぼ不可能であるということです。犯行時点で証拠から有用な情報が得られなくても、後世になってテクノロジーが進めば犯人が特定されることも十分あり得るということです。

今後、当時より性能が上がっているDNA鑑定や研究によって、『切り裂きジャック事件』の犯人が判明するかもしれません。

それは、現代の事件にも言えることです。犯罪を犯してしまえば、すぐに真実が究明されます。犯罪を犯した事件は、すぐに真相が見つかってしまうことでしょう。

このような悲惨な連続殺人事件が起きることがないよう祈りながら、今後の『切り裂きジャック事件』の展開にも注目です。

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東大工学部精密機械工学科卒。外資系大手半導体企業(Texas Instruments)に25年勤務。最初の5年間はダラス本社に赴任。おかげで英語でも文章が書けます。 専門は EDA (Electronic Design Automation) のソフト開発ですが、プリント基板、コンピューター、インターネット、IT/AI をひととおり経験。つくば研究支援センターでのベンチャー企業の立ち上げやインド2社のソフト開発プロジェクトに参加したこともあります。